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Story

Story Vol.4

時の女神に出会うために

デザインディレクター、川崎和男氏によるウォールクロック。天体の動きと時との関係、それまでの時間計測表現からの解放を目指したデザインは、プロダクトデザインの枠を超えたアート作品として、世界各国で高く評価されています。

時の女神に出会うために

HOLA’s Dimple
This is not a clock, this is like a clock.
“to meet the goddess of time”

むかし、人は、太陽を、月を、
そして星を見つめて「時」を知った。
いま、時計には、太陽も、月も、星もない。
目を凝らして、このHOLAを見つめてほしい。

かつて、時刻は宇宙から授けられた恩恵であった。
太陽を、月を、そして星を見つめた眼差しを
取り戻すことが出来ないだろうか。
天体の形態を引用し、時間の形式を
測定値から開放したい。
もう一度、光と影、天体の動きに目を凝らし、
体を寄り添わせるなら、
宇宙の球面に、私達の営みがあることを
思い出すだろう。
HOLA’s Dimple
「時の女神に出会うために」

生活の景観、その消失点に
球面のえくぼが見え隠れするとき、
計器でしかなかった時計は
宇宙の意味と私達を配置し直してくれるはずである。
その時HOLA=時の女神のえくぼある微笑みを
もう一度、知ることが出来るだろう。


1988年、川崎和男氏によってデザインされた「HOLA」は「GANBARA」シリーズの不朽の名作です。

20世紀を代表する時計として、また時計の概念を超えたアート作品としてクーパーヒューイット美術館では「20 世紀を最も表現した 'THE CLOCK'」として永久収蔵されている他、多くの美術館に永久保存されるなど世界中で高く評価されています。

1989年に日本ではグッドデザイン賞も受賞しています。
1988年発売当初は、落ち着いた色調の全9色で展開し、2006年に金沢21世紀美術館で開催された「artifical heart:川崎和男展」を記念して復刻されました。

天体の動きを見て、時を知る

この時計には、数字がありません。あるのは1本の針と円盤。丸い円盤はそれ自体が動きます。
円盤には、天体をイメージしたディンプルという凹んだ部分があって、針が「分」を、ディンプルが「時」を示しています。
部屋に射し込む光と影によって時刻が分かるようになっています。

HOLAは、かつて時計のない時代、太陽や月を眺めることで時刻を捉えていた人類と同じように、天体と時刻の親密性を表現すべく開発されました。
「天体の動きを見て、時を知る」
宇宙から時刻を知るという観念を「かたち」にしたHOLAを眺めながら、壮大な宇宙と時刻の関わり合いを感じていただければと思います。

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Kazuo Kawasaki

1949年福井市生まれ、魚座・B型・左右利き。インダストリアルデザイン・プロダクトデザインから、デザインディレクターとして、伝統工芸品、メガネ、コンピューター、ロボット、原子力、人工臓器、宇宙空間までデザイン対象として、トポロジーを空間論に持ち込んだ「ことばとかたちの相対論」をデザイン実務としている。グッドデザイン賞審査委員長など行政機関での委員を歴任。国内外での受賞歴多数。また、ニューヨーク近代美術館など海外の主要美術館に永久収蔵、永久展示多数。『Newsweek日本版』の「世界が尊敬する日本人100人」に2度選ばれる。「Peace-Keeping Design(PKD)」というプロジェクトを提唱。