Sustainability
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Lemnos Sustainability 11
Edge Clock -伝統的な技術の継承と、新たな商材の発掘
富山県高岡市の地場産業である砂型鋳造の高度な技術を用いて製造された、アルミ二ウムの掛け時計
400年に渡る伝統的な技術の継承と、新たな商材の発掘
高岡市の伝統産業である黄銅生型鋳物による浄土真宗用仏具製造の個人創業として始まった高田製作所は、高い鋳造技術をもつ工場として評価を受けています。しかし時代と共に仏具のあり様が変わり、需要が徐々に落ち込む中で、新たな商材の発掘を課題としていました。400年に渡る伝統的な技術を継承しつつ、モダンなインテリアにふさわしい製品を求め、2000年にアルミ砂型鋳造の技術を用いた掛時計の開発を、ロンドンを拠点に活躍するデザインユニットAZUMIとおこないました。使用するアルミ合金「AC7A」は、耐食性に優れ、研磨した際の光沢が美しい高品質な素材ですが、湯流れが悪いなど作業性の悪さも特徴です。シンプルでシャープなデザインは誤魔化しが許されず、高い技術が求められますが、同時に現場スタッフの製作意欲を掻き立てるものです。デザイナーと職人のモノづくりに対する熱意と情熱により、Edge Clockがアルミ砂型鋳造時計として唯一無二の存在となることを目指しました。
素材と加工とデザインの肉薄した関係を追求したデザイン
開発をおこなった2000年代初頭はクロックブランド「Lemnos」が認知度を高めた時期と重なります。順調な成長を遂げていた同ブランドですが、自社のルーツであるアルミニウム鋳物製品については開発の余地が残されている状況でした。デザイナーが開発に取り組む前にアルミニウム砂型鋳物工場の高田製作所を訪れ、世界でも類を見ない洗練されたものづくりの現場を目にし、その技術資産を最大限に活かす事をデザインの中軸に据えました。そして、素材と加工とデザインの肉薄した関係を追求した結果がこのデザインです。大判で平滑な鋳肌、外周から指標へと続く薄く彫りの深い造形など、通常の砂型鋳造では困難とされるディテールを敢えて採用することで、高い技術に裏打ちされた新たな表現を獲得しています。煉瓦やコンクリートなど強い表情を持った壁面に掛けても質感で負けない、工芸的な風合いを持った、他では得られない特別な価値を提供するデザインとなっています。
型枠に嵌め込んだ砂型の下部分
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注湯:溶けた金属を型に注ぐ
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砂を崩して、鋳物を取り出す
工芸品としての質感・風合いを兼ね備えたコンテンポラリーな掛け時計
世にシンプルな外観の掛け時計は数多ありますが、これほどに高度な砂型鋳物成形技術に裏打ちされたものを発見する事は容易ではありません。大判で平滑な鋳肌、外周から指標へと続く、薄く彫りの深い造形、磨き上げられた端面とサンドブラストの表情のコントラスト等、どれもが高いクラフツマンシップに裏打ちされています。「工芸品としての質感・風合いを兼ね備えた掛け時計」は現在も競合が少なく、コンテンポラリーな掛け時計のデザインにおいては、この製品が開拓した領域です。この技術の高さはそれ故に「完全なコピー商品が生まれない」という結果を生んでいます。さらにこの時計の持つ質感の高さは、煉瓦などの強い表情を持った壁面に掛けても存在感で負けないという、他の製品では得難い価値を提供しており、海外でも人気を博す結果となっています。
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研磨作業
開発当初に目指した、唯一無二のアルミ砂型鋳造時計
Edge Clockは、2002年の発売以来、20年に渡りそのスタイルを変えずに販売を継続してきました。特徴的なデザインが受け入れられるまでには時間を要しましたが、2005年にSEMPRE青山で行われた「安積伸RECENT WORKS」展で紹介されたことをきっかけに注目を浴び、国内の多くのデザインショップやニューヨーク近代美術館MoMAでの販売を実現しました。その効果から年間の販売数量が倍増し、さらにはJIDAデザインミュージアム収蔵品や松屋デザインコレクションにも選定され、デザインにより地場の技術が最大限に引き出された美しい製品である、と高く評価されました。
今ではサイズバリエーションが充実し、パーソナルユースのみならず商業施設やオフィス空間など、様々な場面でこの時計を目にし、その広がりを実感できます。これまでの販売数量は18,000台を超え、開発当初に目指した他ではまねができない唯一無二の時計として、多くの人に愛用されています。
左からAZ-0115 SL(φ350)、AZ24-08 WH(φ290)、AZ-0116 BK(φ180)