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Sustainability

Lemnos Sustainability 09

JAL ボーイング777 型機のアップサイクルプロジェクト

キャビンウィンドウを使用した時計の誕生ストーリー

タカタレムノスは、新しい素材や技術を注目し、日々製品開発を行っておりますが、近年は、持続可能性という観点から、リサイクル素材や部材の活用にも力を入れています。そのような考えのもと、同様の理念を掲げて活動している企業とのパートナーシップについて模索していました。その中で、JALグループの商社である株式会社JALUXより、退役するJALボーイング777型機解体後のリサイクルパーツを用いた商品開発の話をいただきました。

今回は、この取り組みついてご紹介をさせていただきます。

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JALオリジナル ボーイング777 キャビンウィンドウ ウォールクロック ホワイト/ブラック
JALオリジナル ボーイング777 キャビンウィンドウ テーブルクロック ホワイト/ブラック

JALグループのアップサイクルプロジェクト

タカタレムノスは、株式会社JALUXの企画の下、JALグループが進める航空機のアップサイクルプロジェクトに参画し、商品のデザインと製造を担当いたしました。商品は、退役したJALボーイング777型機のキャビンウィンドウを風防に用いたオリジナル掛時計と置時計で、JALショッピングJALMall店にて数量限定で販売しています。

〈 JALグループの取り組み 〉

JAL グループは、2030年に向けた「JAL Vision 2030」にて、自らの手で「安全・安心な社会」と「サステナブルな未来」を創ることを掲げ、ESGを経営戦略の軸に据えて取り組んでおり、その一環として、2022年に国内初となる退役したボーイング777型機のリサイクルを行いました。そして、JALグループ内の関連会社が協力し、外部企業に働きかけることで、リサイクルパーツを用いたアップサイクル商品が生まれています。

〈 株式会社JALUX 〉

日本航空公式の総合オンラインショッピングモール「JAL Mall」や「JALふるさと納税」サイトを運営するほか、全国24空港に空港店舗「JAL PLAZA」を展開するなど、航空・空港領域に強みをもつJALグループの商社。

航空機のストーリーとデザイン

よく目にする航空機ではありますが、実際にどのようなパーツで構成されているのか想像がつかず、百聞は一見に如かずということで、早速、羽田空港内のJALメインテナンスセンターへ伺いました。メインテナンスセンターでは、解体されたパーツの説明から、実際の航空機を整備するための格納庫や施設内にあるJAL SKY MUSEUMの案内をしていただき、航空機を安全に運航させるために、緻密な作業を積み重ねていることを知ることができました。新しい機種のボディーには、軽量化の目的で炭素繊維を用いた複合材が採用されていますが、ボーイング777型機はアルミニウム合金が主材料で、アルミニウム合金を採用した商品を多く販売するタカタレムノスとしては、親近感を持つことができました。

JALメインテナンスセンター格納庫

今までにも退役した航空機のリサイクルパーツを使った商品は販売されてきましたが、コレクター向けの商品が多く、そのような方々以外にも訴求できる高いインテリア性が本プロジェクトでは求められました。その中で、様々なリサイクルパーツを用いたアイデアを検討し、最終的にキャビンウィンドウを、原形に近い状態で風防に用いたウォールクロックと、半分に断裁した状態で風防に用いたテーブルクロックの企画が採用されることとなりました。

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JAL777キャビンウィンドウ

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提案イメージ

時計は、航空機を想起させるエレメントを引用しデザインされています。風防を囲む外枠は、シャープな印象を持たせるように、薄いスチールプレートを曲げて加工し、JALボーイング777型機と同じ白の塗装を施しています。時針・分針と指標はコクピットの計器から着想を得たデザインとなっております。針と指標という同じ要素で構成されるものでも、計器と時計では概念が異なります。計器は瞬時に指し示す数値を把握できるように、視認性を最大限に高めていますが、時計は数値(時刻)だけでなく、「5時まであと20分」など数量を伝える役目も兼ねているので、針と指標のバランスを含めた文字盤内の空間デザインが重要になります。計器と時計、お互い特徴を合わせることで、視認性とデザイン性を兼ね備えた新しい時計グラフィックとなりました。

JAL SKY MUSEUM 展示

ウォールクロック時計グラフィック

協力工場の特徴を活かした柔軟な加工

時計部材の加工は、その特性に合わせて、各地の協力工場にお願いすることとなりました。最もデリケートであったのが「キャビンウィンドウの加工」です。キャビンウィンドウは2層の厚みの異なるアクリル板で構成されています。アクリル板と言っても、航空機の外壁形状に合わせ湾曲しており、かつ長年の運航による微細なキズが見られ、1つ1つが微妙に異なるものでした。フラットなアクリル板であれば、機械での正確な断裁や穴開けが可能になりますが、上記のような形であるため、人の手で1つ1つ状態を確認しながらの加工が求められました。そこで、普段は金属鋳造用木型を製作する富山県高岡市の工房にて、専用工具を製作し、キャビンウィンドウの加工を行っています。

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スチールプレートを曲げて製作した外枠は、板金加工を得意とする新潟県燕三条エリアで製造しました。加工は、シンプルな機器をうまく活用し、ベテランの職人が1つ1つ曲げ具合を調整しながら行っています。その他、文字盤の加工は長野県の木工所、針の製造はアイウェアの製造で有名な福井県の金属加工所というように、タカタレムノスの本社がある富山県を中心した北陸信越ものづくりベルトを最大限に活用し、この時計は製造されています。

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リサイクルパーツを用いる場合、新規の材料よりも、加工に技術とアイデアが求められます。タカタレムノスでは、長い間、デザイナーの奇想なイメージを形にしてきたノウハウを活かし、柔軟なものづくりに対応することで、量産品とは異なるストーリーもった商品開発を実現することができます。今後も、同じようなものづくりに対する理念をもった方々との取り組みに力を入れていきたいと思います。

キャビンウィンドウに入った傷に歴史を感じます。

キャビンウィンドウに記されていた製造番号等はそのまま残しています。

商品の背面には日本航空のロゴマークと共にシリアルナンバーが刻まれた銘板が貼付されています。