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Sustainability

Lemnos Sustainability 04

素材を活かしていくために -廃材を無くす取り組み-

2012年に製品として世に登場して以来、奈良雄一氏デザインの『MIKI』はロングライフデザインとして、多くの人に愛用されています。時計枠の材料であるケヤキは、木目が美しく、耐久性も高いため、主な用途として寺社建築や高級家具など上質な国産材として好まれています。そのケヤキの太い幹を切り出し、旋盤で丸く加工して継ぎ目のない枠とした贅沢な時計です。

商品: MIKI / ナチュラル(NY12-06 NT)

ケヤキ枠の生産地である富山県の庄川は、全国有数の挽物木地の産地です。その特徴は杢目(もくめ/木を挽いた時の円周に現れる木材面・模様)の美しさを活かすために、横木で加工している点になります。横木とは原木を縦にスライスしたものから木取りをする方法のことで、木の道管(水分が上昇する通路)が時計枠の正面側と平行に走るため、年輪が様々な形で表れ、製品に多様な表情が生まれるのです。

2種類の木地の取り方:庄川は横木取りが特徴です。

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NY12-06枠の加工風景。

時折、美しい杢目の中には節(ふし/茶色い斑点のような模様)が出てくることがあり、実際に加工するまでどれくらいの大きさになるかは分かりません。状態によっては製品にすることが難しく、やむなく廃棄することもありました。しかし挽物職人さんによって丁寧に時計枠として加工して頂いたものを簡単に破棄したくない、たとえ1個や2個であっても可能な限り全ての時計枠を活かしていきたい、と常に考えていました。 そして、2022年に奈良氏と石川県輪島市の漆塗り職人さんとの出会いから、廃棄される枠に漆塗りを施した『MIKI SUKI URUSHI』、『MIKI URUSI WAJIMA』が誕生したのです。 この産地間のコラボレーションにより、貴重な材料の廃棄をなくすことができました。 商品:MIKI SUKI URUSHI(NY22-03) 商品:MIKI URUSHI WAJIMA / レッド(NY22-04 RE)ブラック(NY22-04 BK)

漆塗りの加工風景。下地を塗った枠(右側に並んでいる枠)に漆を均一に薄く塗って、乾いた後に磨き、さらに漆を塗る工程を繰り返します。

また、ロングライフデザインとして長期に渡り販売を続けていく中で新しい課題が見えてきました。発売当初は挽き物加工の魅力を伝える時計として枠の中央部分も削り取っていましたが、生産数の増加に伴い作業効率を上げるため、中心の文字盤部分を刳り抜く手法へ切り替えることになりました。そうすると今度はその刳り抜いた中心部分が「端材」として発生することになります。端材とは言ったものの『MIKI』同様に立派なケヤキ材です。燃料として焼却するには実にもったいないことで、これを何とか活かしていきたい! <Lemnosならでは>の企画として!

『MIKI』の中心を刳り抜いた端材。

『MIKI』の発売と同じ2012年、ウォールナットの端材をきっかけに開発した『MUKU desk clock』がありました。材料の元となる製品が廃盤になったことで端材では無くなり、使用する木材もウォールナットからブナ・アルダーに変わりましたが、Lemnosの人気商品として現在も販売されています。これと同じように製品化できるのであれば、と考え木枠の製造工場に伺ってみたところ、所有しているNC機で加工するには四角形状にする必要があり、それでは寸法が足りなくなってしまう。つまり、この工場では円柱形状の端材のままでは加工できないことが分かりました。

商品:MUKU desk clock / ウォールナット(LC12-05 WN廃盤)

そこで再び『MIKI』の挽物職人さんに辿り着くことになります。 実際に『MUKU desk clock』をご覧いただくと、枠正面の丸い加工は挽物が専門であるため全く問題なかったのですが、裏面のムーブメントが入る角丸四角の形はNC機を持っていないためこの工場では加工ができないと言われてしまいました。形にできないのであればまた別の方法を検討してみるしかないと諦めかけたところ、職人さんがそれでも何とか加工ができるようにと治具の形状を考案してくださり、手作りで組み立てた機械でこの加工に挑戦してくださいました。 そして何度も打ち合わせと試作を重ねて、ようやく『MUKU desk clock』と同じ形状で製造していただくことが叶ったのです。こうして、課題であった廃材の有効活用が実現できました。

LC12-05ケヤキ枠の加工風景。裏側の角Rを加工しています。

裏面のムーブメントが入る角丸四角の形を加工中。手元の板材を動かす仕様になっており、板材の裏に可動域を制限する治具があります。

LC12-05ケヤキ枠の裏側。

様々な木目があります。

商品:MUKU desk clock / ケヤキ(LC12-05 KY)

年々供給量が減りつつある木材は、これからもっと貴重なものになっていくでしょう。今まで以上に丁寧に、大事に、そして可能な限り廃棄することなく材料を活かすことを考えていきたい。 この『MIKI URUSHI』と『MUKU desk clock ケヤキ』の取り組みは、デザイナーによる意匠設計と、挽物職人や漆塗り職人の研ぎ澄まされた手の技により実現されました。そして、レムノスの「環境負荷軽減とデザインの両立」の意識の元に集結できたと感じています。